ロリポップ・アンド・バレット

アニメ・映画・特撮・読書の感想や考察を書いたり書かなかったりする

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

毎年恒例でaninado様が集計されている「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」企画に、今回初めて参加させて頂きます。 aninado.com ■「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。・…

「SDGs要素」は如何にしてフィルムを支配したか。あるいはメディウムとしての”天使”『キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~』総括

『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5GoGo!』の夢原のぞみ達が大人になった後日譚を描く『キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜』がついに最終回を迎えました。 幼い頃は想像もしなかった「大人としての葛藤」を抱えるかつての”プリキュア”達は、突如…

16bitセンセーション 8話感想 偶然が生み出す想像力のスペクタクル

マモルがタイムリープした1985年。ファーストカットで映し出され、その後何度もリフレインされる振り子時計と、同じく「等間隔に動きを刻む」水飲み鳥。これまでコノハが体験してきたようなタイムリープと比べても明らかに異質な空間として、それらのアイテ…

『星屑テレパス』1話における、言語コミュニケーションの限界

これから始まる高校生活への期待と不安。鏡のフレームに吊るされた制服が取り除かれ、海果の姿がここで初めて映されます。しかしその姿は海果の”鏡像”であり、まるで「鏡の向こう側の存在」のように描かれたファーストカットです。 「私の言葉は誰にも届かな…

葬送のフリーレン『勇者』MVから見る「過去の虚構性」について

”まるで御伽の話”の歌い出しから始まるように、フリーレンにとっての10年間の旅路は、刹那の儚い物語にすぎなかったのかもしれません。 それを裏付けるのが「影絵」による童話的なシークエンス群です。淡い色彩で描かれた情景が次第にモノトーン基調の映像へ…

「自由」としての迷子 あるいは"コード"からの解放『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』10話 考察

冒頭。プラネタリウムを見る燈が、劇中アイドルユニット「sumimi」の初華と居合わせるシーン。その後、プラネタリウムの上映終了後に、屋外で夜空を見上げる二人。 振り返ってみれば、この時に燈と初華の両者を媒介していた「星」は、この挿話においてキーと…

”接近”と”すれ違い” あるいは範列の置換可能性について 『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』 9話 考察

解散したかつてのバンドであり、「運命共同体」という精神的支柱でもあったCRYCHICへの未練が拭い切れぬ長崎そよ。CRYCHICの復活に向けて暗躍していた彼女の目論見も虚しく、元バンドメンバーにしてCRYCHICの創始者・豊川祥子から一方的な最後通告を叩きつけ…

『幻日のヨハネ』1話 感想 「視界に入る」と「見る」について

「トカイでビッグになる」ヨハネの夢は今や断たれ、ヌマヅ――何もない”田舎”――に出戻りする。つまり彼女にとっては「〈中心〉に憧れるも、志半ばで夢破れ〈周縁〉の引力に屈する」という屈辱的な仕打ちで開幕する『幻日のヨハネ』。 「何でも揃っている」トカ…

「泣かない強さ」ではなく「泣いても立ち上がる”レジリエンス”」アイドルマスター シンデレラガールズ『U149』11話 考察

今回のサブタイトルである「大人と子供の違いって、なに?」。 サブタイトルの形式そのものは、これまで同様に「なぞなぞ」モチーフの法則性を保っているものの、その”問い”の内容については、他の回とは質的に全く異なっている事が分かります。それは「なぞ…

ルマリーはいかにしてスクリーンを支配したか『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』考察

世界規模で遊ばれているゲームの金字塔『マリオ』シリーズの映画化、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ですが、この物語において明らかに、それも意図的に「ノイズ」として配置される存在があったと思います。それは「死は唯一の救済」という独自…

『【推しの子】』OP映像における「視線の非対称性」について

イントロで映される病室にオーバーラップされる各々の”目”が象徴するように、『【推しの子】』は”視線”によって紡ぎ出されるドラマだったのでしょう。テレビへのクロースアップ後、画面が点灯して映し出されるのはアイの口元です。 ここで着目したいのは、フ…

『転生王女と天才令嬢の魔法革命』アニメ総括――メディウムとしての身体を放棄し、「直接的な接触」を獲得する物語

オープニングのファーストカットから映し出され、繋がれるアニスフィアとユフィリアの「手」が象徴するように、本作は触れること――他者との”直接的”な接触――を通じて失われた”ヒューマニズム”を取り戻す作品と言えるでしょう。 物語の重点は主に王女のアニス…

『グリッドマンユニバース』はオーディエンスを救いに来た ※ネタバレ有り感想

※本記事は『グリッドマンユニバース』のネタバレを含みます。未視聴の方はブラウザバックを推奨いたします。 時系列的には『SSSS.GRIDMAN』の本編の後のストーリーとなる本作では、『SSSS.DYNAZENON』と世界観が混ざり合うマルチバースを舞台とし、本編にお…

ブログ名変更のお知らせ

諸々の事情により、本日よりブログ名を「ロリポップ・アンド・バレット」へ変更する事となりました。 変更点はブログタイトルのみで、その他これから書く予定の記事の内容や方針については一切の変更はございません。 タイトルの由来は桜庭一樹の小説『砂糖…

視線を「分散」させ「注視」し直す革命ドラマ『転生王女と天才令嬢の魔法革命』2話 感想

オルファンス(アニスフィアの父)とグランツ(ユフィリアの父)の会話シーンで始まる冒頭。両者の間に置かれる魔道具のポットが画面中央に位置し、思わず視線がそちらに誘導されます。その後、アップで映されるアニスフィアの顔の絵が入ったポット。 今この…

『ぼっち・ざ・ろっく!』12話 感想 気になった演出・フレーミングなど

文化祭ライブの演奏シーンから幕が上がる最終回。 その先陣を切る一曲目『忘れてやらない』の演奏中にインサートされる、人のいない学校内の画。何もイベントのない普段の学校であれば、そこには生徒が点在し、学内の生徒一人一人がそれぞれの”青春”を謳歌し…

星新一『ボッコちゃん』レビュー 鏡は理想を”反射”するのか、あるいは”反転する”のか

星新一の代表作『ボッコちゃん』。 ごく短いショートショートという形式を取る文学作品でありながら、特異な世界観・伏線の回収など、小説のエッセンスが込められた一作。 今回は作品のキーパーソン(?)であるボッコちゃんの役割について書いてみました。 …

「見えないもの」を映し出すスポットライト あるいは高咲侑は如何にして”主役”になったか『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期 8話 感想

イメージカラーの「黒」が象徴するように、これまで「スクールアイドルとして舞台に立つ同好会のみんな」を裏方として支えてきた高咲侑は、「黒子」だったのかも知れません。 勿論、そうは言っても単純に「スクールアイドル」>「黒子」といった図式が成り立…

会計知識ゼロから簿記2級(ネット試験)を完走した感想 学習ルート等

案外需要がありそうな気がしたので、日商簿記検定2級(ネット試験)の合格に至るまでのプロセスを残しておこうと思いました。 先ずご留意頂きたいのは、こちらの内容は2021年度(2021年4月〜2022年3月)に受験した時点での内容です。従いまして、2022年度に…

「寄り道」が生み出す選択肢のドラマ 『スーパーカブ』2話 感想

趣味も目標も友達も無い、「ないない尽くし」の少女・小熊の日常が、カブとの邂逅を起点に彩られていくアニメ『スーパーカブ』。その1話が「カブとの出会い」に重きを置いた回であるとすれば、2話は「カブがもたらしてくれた出会い」の回とも言えそうな、”…

「越える」のではなく「寄り添う」ための境界線 あるいは大戸アイは如何に優秀な”バックダンサー”だったか 『ワンダーエッグ・プライオリティ』 3話 感想

夢と現実・生きている者と死んでしまった者・そしてアイドルとファン。 これまでもアイの両親・親友の小糸など「関係性の分断」に焦点を当て続けてきた『ワンダーエッグ・プライオリティ』。決して交わる事の無い両者の”分断”と、その一線を越える事の意味。…

『仮面ライダー鎧武』1クール目の感想と、印象に残った演出・モチーフについて(上手/下手・電車・階段・水) 後編

前回の記事では、ビートライダーズ編前半の山場・5話までの演出と気になった展開について書きましたが、今回は6話〜14話(ビートライダーズ編〜ユグドラシル編の導入)についてです。 ここでもやはり、「フェンス」が重要なモチーフとして登場します。戒斗率…

『仮面ライダー鎧武』1クール目の感想と、印象に残った演出・モチーフについて(フェンス・階段・枠) 前編

東映特撮Youtube Officialにて配信中の『仮面ライダー鎧武』をリアルタイムぶりに再視聴。大まかなストーリーは把握しているが、改めて細かなセリフや演出に着目して見てみると再発見が多かったので、1クール目(14話まで)で「気になった演出や展開等、一度…

メタフィクションとして見る『デカダンス』、あるいは「メタで始まり、ベタで終わる物語」について

アニメ『デカダンス』、「世界観のネタばらし」を序盤で披露し、「ネタばらしのその後」を描くという強い意志を感じる魅せ方に「思い切った事をするなぁ」と思うと同時に圧倒的な「信頼感」を抱いたののが、まず自分が視聴継続を決心した理由の一つ。 個人的…

『タイバニ』マーベリック編に感じる"惜しさ"

外出自粛のゴールデンウィークに際して、折角だから今まで手をつけていなかった人気作を見ていこうと思い、『TIGER & BUNNY』(以下『タイバニ』)をこの5日間で視聴。 「ヒーローもの」の王道を行く脚本と、クリフハンガーな物語の引きがかなり印象深い作品…

なぜ「3値を知る前には戻れない」のか あるいは「しゅくふくポケモン」が自分にもたらした"呪い"について

ゲーム『ポケットモンスター』シリーズ、単純計算してみたら23年も続いてるシリーズと知り、めちゃくちゃ息の長いコンテンツに進化してきたなと。自分が小学4年生だったか5年生だった頃、木曜日の塾帰り、家に変えればまずチャンネルをポケモンに変える…

ボンドルドは如何に魅力的なヴィランだったか 『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』感想

『メイドインアビス』はその可愛らしい風貌のキャラクターに反し、熾烈な世界観だったり、目を覆いたくなるような惨状が描かれる事から、すっかり「ハートフルボッコアニメ」の代表として見なされつつある作品だ。原作者・つくしあきひとと言えば、私個人と…

『異世界誕生2006』感想 「アンチテーゼ」に留まらない"ドラマ"に泣く

数ヶ月前にツイッターで、その惹き込まれるあらすじが話題になっていた『異世界誕生2006』。この正月休みの楽しみにとっておいた作品を読み終えての感想を残しておきたい。 2006年、春。小学六年の嶋田チカは、昨年トラックにはねられて死んだ兄・タカシの分…

『荒乙』最終回における「色」の考察。あるいは「子供ではいられなくなる」事について。

2019年夏アニメも最終回を迎え、いよいよ秋アニメも始まる時期という事で、印象に残った作品の感想でも残しておこうかなと。とりわけ、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(以下、『荒乙』)は、あの岡田麿里脚本という事も相まって、界隈での「熱」が大きかった…

『ぼっち生活』における「リアリティラインの曖昧さ」について。あるいは「見方を変えてアニメを楽しむ」事について。

ついに最終回を迎えた『ひとりぼっちの○○生活』(以下、『ぼっち生活』)、改めて振り返ると、「思い切った作品」だったなあと。人見知りの主人公が、ひょんな事から色々な出会いを経験して精神的に成長していく系の話は、なんだか昔の自分を見ているようで…